やさしいライオン



『うなされながら…貴方の名前を何度も、ね…』

『…それで』

『肉体的疲労もそうですが、立て続けに大きな問題が起きています。精神的にもかなり追い詰められている』

『…。俺に、どうしろと』

『…一日…いえ、一晩で結構。彼の側にいてあげて下さい』













(何故、俺は此処にいる)


わからない。


レプリカであるこいつなど、自分にとって何処までも足枷でしかない、邪魔な存在。

そんな奴の側にいて何になる。
コイツのお陰でやらなければならない事は、山のようにあるというのに。

(役立たずの…レプリカが)


何もあの眼鏡に強制された訳ではない。
嫌なら直ぐにでもこの部屋を出て行けばいい。

…しかしどうだ。

荒い呼吸、汗、焦点の合わない瞳。
容態は思っていたよりも悪いらしい。

出て行くどころかその様子を見、額に手を当てて熱を見ていた。

看病を、始めてしまったのだ。
我ながら自分の行動が理解出来ない。


(…、熱いな)


額に触れられて気付いたのか、ルークが此方を見た途端びくりと震え怯える様に体を縮めた。
…何だその態度…その弱弱しさは。
自分のそんな姿を見ている様でやはり腹が立ってくる。

「…腹なんぞ出して歩くからだ、馬鹿が」

『…精神的にも追い詰められ──』

ぎゅ、ときつく閉じられた目尻に光るものが見え、ジェイドの言葉を思い出し自分の口を反射的に覆った。

コイツを見たら口をついて出てくるのは、そんな言葉ばかりだ。
確かに自分でも、今までが乱暴過ぎたかも知れないと思う。

(…クソ)

だからと言って優しい言葉を掛けられる程、自分が器用でないことはアッシュにも分かっていた。





「…ジェ、ド…俺…会いたいよ、アッシュに…」

(…、…何だと?)

暫く正体の分からない、焦りに似た感情に思考を取られていた。
ルークの掠れた声ではた、と我に返る。

「…おい、お前、…?」

目の前にいるのはあの眼鏡などではなく、当の本人だというのに。
ルークの瞳は確かにアッシュに向けられてはいたが…何処か遠い所を見ている様だった。

もしや最初から、俺だと認識出来ないでいたのだろうか。

「…嫌われてるのは、分かってる…でも…一人、じゃ…あいつ、…ッ」

溢れ出る涙が枕を濡らし、弱りきった体は痛々しく嗚咽に揺れる。


何故か、腹が立って

何故か、胸が締めつけられる様で


(──…泣くな)
(…!あ、シュ…?)


オリジナルと、レプリカ
互いを繋ぐ特別な方法
その頭に、直接


(─…アッシュ…!今、今どこに…いるんだ…!)

(──…感じてみろ…お前なら分かる…)

(─…そんな、俺…お前じゃない、…んだから分かるわけ)

(──…)

そっとルークの視線を遮る様に手を置き、乾いた唇へと己のそれを寄せた。

「…!!」

重力に従って流れる様に滑り落ちた髪がルークの頬や首筋を擽る。
何か言いたげに開かれた唇を、アッシュは再度、やさしく塞いだ。


(─…何も言うな。…今は)

(─…ア…シュ…)

(──…眠れ)








まだまだ練り足りないんですが、これ以上モタモタしていたらお蔵入りになりそうだったのでUP。

細々とツッコミドコロ満載で申し訳ないです…

題名は、真っ赤なタテガミといつもガオガオ吼えてる彼がやさしくなったら…と余りこれまたよく考えずに(笑)

サラッと読んで頂ければ幸いです。


2006/1/12

BACK