神域
「私が叩き潰してあげますよ!二度とそのイヤミったらしい口をきけなくしてやりますから!!!!」
最早負け犬の遠吠えかもしれない。
自らの持てる技術の粋を集めたこの譜業も、時間稼ぎにしかならないとは。反吐が出る。
「ジェイド…」
なぜ貴方はそんな所にいるのですか。
二人で必ず先生を生き返らせようと、類い希な才能を持つもの同士力を合わせて来たのに。
もう少しで完成するという所で貴方は変わってしまった。
あの男に唆され、行ってしまった。
「ジェイド…ジェイド…ッ!」
今ここで死ぬ訳にはいかないのだ。やり残したことが沢山ある。貴方と話したいことが山ほどある!
「うわッくそ!ジェイド!行ったぞ!」
「旦那、詠唱は間に合わない退いてくれッ!!」
纏わりつく赤毛たちを、残り少ない動力をギリギリまで使って吹き飛ばしてやった。
前衛を除けてしまえば、あとに残るは…
「!!」
ノイズ著しいモニターがその人物を捉えた途端、音素計器の針が瞬時に振り切れけたたましい警告音が鳴り響く。反射的に体が強張った。青い軍服の男に目が釘付けられる。その間にもその長身の下には幾重もの複雑な譜陣が現れ音素が凝縮されていく。
この瞬間に、なんて量だ。
驚愕に目が見開かれる。
詠唱が間に合うか間に合わないかの距離、最早惰性で動いているとしても、この巨体がぶつかれば…生身の人間だ、いくら彼でも耐えきれないだろう。
この状況で詠唱を始めるとは。
モニター越し、まるで全てを見通すかのように見据えてくる、あの瞳。
慈悲なんて欠片も宿さない、向けられる殺気がぴりぴりと全身に感じられる様だ。
でもあの人から向けられるのであれば、この殺気でさえ…!
「さあ私の凄さを思い知りなさい!そしてまた私と…!?」
あと少しで。そんな瞬間にとてつもない力が全身を襲った。惰性で動いていた巨体は呆気なく動きを止められ地に沈む。
「っ…グ…!!!」
骨が、全身が軋むように重くなり操作盤へと這い蹲りそうになるのをなんとか堪える。
重力魔法か、それなら何とかまだ耐えられる筈だ。詠唱後の隙に思い切り一撃を叩き込む。
あの美しい人の顔を歪ませて良いのは私だけなのだ。
力を振り絞りモニターを睨み付けると、映る人物は天へとその片腕を高く上げていた。閉じられていた赤い双眸がゆっくりと現れるさまに目が惹き付けられると同時に、はたと気付いた。
まだ術は発動されていなかったのだ。あの人の唇はまだ詠唱を続けている。なのにこの重圧。
一人の人間では到底集められないだろう桁違いの音素が場に渦巻いている。
それらが、彼の人に敵成すもの全てを地に這わせているとでもいうのか。
とてつもない力にゾクゾクと全身が歓喜に痺れ、唇が弓形にひきつれる。
ああ、なんて、なんて、貴方は…!!
「…素晴らしい…!!!!」
そう、それはまるで
神域 と 思えるような
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この世界のすべてが 彼の下へと平伏す時
2007/3/3
ディストの世界は99.9%がジェイドで構成されています。
如何にジェイドがすんごいのかを書きたかったんですが文章力が全然足りませんでした、撃沈。
拍手SSでした。