01:たたく






「…庇ったのか」

「…手が掛かります」


苦笑だがどこか、微笑み混じりに小さく頷いて肯定するジェイドを、ピオニーは複雑な表情で見遣った。


こいつは身を呈して他人を庇う様な男ではない。

敵軍の捕虜からの話を耳に入れてみれば、ジェイドは──…死霊使いは、動かなくなった部下やキムラスカ兵の死体を操れば効率が良いと判断するや否や、僅かに息のある部下たちの首をも斬り裂き、その骸を利用したという。

事実かどうかは解らない。
聞けば答えてくれるだろうが、そんなことは知った所で今更どうにもならない。
…それとも俺は、確かめるのが怖いのかも知れない。。


『私は血の通わない、冷たい人間なのですよ』


感情の見えない微笑を浮かべ自らをそう表したあのジェイドが。
俺やネフリー以外の者を庇うことなど。


…いや、お前は…変わったんだな、ジェイド。


本当に。


幼馴染み以外の人間に対してもそんな顔が出来る様になったのか。
それを喜ぶべきなのは解っているが、お前の親友として悔しい気持ちもあるんだよ。

全く、女々しい事だがな。


「ジェイド!…ピオニー陛下?!」

「おやおや、陛下の御前で。騒がしいですよ」


扉を蹴破る勢いで入って来た人物を見やれば、直感的にあぁと納得した。

お前か。
俺のジェイドをこんなにも丸くしちまったのは。

「いい。気にするな、俺は戻る」

そう言って立ち上がり、俺を見るなり固まっていたらしいルークを一瞥してやると、また微かにだがその表情が強張った。…面白くない。


「陛下、あの…すみません」

「まあ、俺がここにいる方がおかしいんだ。気にするな」


罰が悪そうに頭を掻くが視線が逃げている。随分と苦手意識を持たれているようだ。
俺より余程、ジェイドの方が扱い難いだろうに、この赤毛は。

「ルーク」

「っはい、…ッ?!」

気持ちいいくらい乾いた音が部屋に響く。
手招かれて走り寄って来たルークの頬めがけ、平手打ちを見舞ってやったのだ。

…んな泣きそうな顔すんな、俺の手も痛いんだから。
それに、お前を殴ってジェイドのお小言も確定だな。


「俺のジェイドをキズモノにしたからな。その礼だ」

「誤解を招く言い方をしないで下さい」


呆れた様に言うジェイドへひらりと手だけで返して、彼の執務室を後にする。


(悪いなルーク、俺もまだまだガキだ。……ますます嫌われちまったかな…)


こちらは必ずしも、嫌いなわけではないんだが。


そう独りごちたら、なぜだか無性にもう一匹のルークが抱きたくなった。







2007/3/23


気にしている内に、ただの恋敵じゃなくなっていたりして

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