9:抵抗する




「あれ?大佐〜?」


ふと横顔を見たら、白いマスクに目が行ったの。
何だろ〜、大佐ってば風邪?


「おや、アニス。何か?」

「そじゃないですけど、マスクなんかして珍しいな〜って。風邪ですか?」

「えぇ、そうなんです…この年になると関節に来て辛いんですよ。看病して下さいます?」


うわ、大袈裟に咳してるけどウッソくさ。大佐ってば滅多に、ってゆーか風邪なんかひかないし、体調崩したところなんて見た事無いし。何か他の原因で口許隠してる。

「たーいさ、私にそんなウソは通用しませんよ!」

「あら、バレちゃいました?」

「何気に付き合い長いですし〜☆女性を無理矢理襲って噛まれた!なーんて…」


んな訳ないか、大佐モテモテだし。


「…まぁ、そんな所です」

「ほえ?マジ?!」

「冗談です。女性にそんな事しません。…実は、仔狐、いや仔犬に噛まれましてね」

「こぎつね…こいぬぅ…?うそぉ大佐、正直に襲ったって言」

「…アニ〜ス。これから何か用事があったのでは…?」


急に低くなった声。
くい、と中指で眼鏡のブリッジを押し上げてからニッコリした大佐の顔を見て、あ、ヤバイと思った。

女のカン、ってヤツ。これ以上は突っ込まない方が身のため。大佐ってば何ピリピリしてるんだろ、いつもこのくらいのツッコミじゃびくともしないのに。


「はぅぁ!え、えっとそうそう、イオン様との約束の時間が来ちゃいましたぁ!じゃ大佐、おっ大事に〜!」


「はいは〜い、気をつけていってらっしゃい」


背中のトクナガを揺らし高速で走り去るアニスを見遣ると、残されたジェイドはそっとマスクを外し自らの唇に触れた。





(私としたことが…少々、手荒でしたかねぇ…)





指先についた血を軽く舐めとると、女性から見ればうっとりと、しかし見るものによっては背筋が凍るだろう美しい微笑を浮かべて。


「此れくらいでは、私は諦めませんよ…ルーク」





2006/1/2
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