「もう少しだね…」
「ああ…お前達が手伝ってくれたお陰だ。後はここだな…」
彼が手を伸ばした辺りへそっと、灯り代わりの尻尾の先を近付けた。
屋敷内はステンドグラスのお陰でかなり明るいとはいえ、流石にここまでは…螺旋の道を降りた地下までは、日の光は入って来れない。
「助かる…」
「うん」
あっちを繋げて、こっちを繋げて…ヴィンセントの指先が赤や黄色のコードを辿っていく。
そう言えばじっちゃんは機械が好きでよくいじってたけど、オイラは人間の作った機械の事は好きになれなくて、無意識に避けてしまっていた。
少しでもちゃんとじっちゃんの機械の話を聞いていたら、今彼を手伝えたかな…?
「…ナナキ…?」
…ああ、つい少し前に旅に出たじっちゃんを思い出したら、少し炎が小さくなってしまったみたい。
弱気になると、オイラの炎は比例して弱くなってしまうんだ。
これって結構、恥ずかしい。
「ごめんね、あんまりお役にたてなくて」
気を持ち直し、せめて彼が作業しやすいようにと、また炎を増した尻尾を更に持ち上げる。
あまり詳しくは聞いていないけれど、この…ニブルヘイムの屋敷に、ヴィンセントが落ち着く事になったらしい。
一週間くらい前から、近くにいたオイラとクラウドで手伝いに来て片付けをしている。調度品や照明関係も新しくして、後は電気を回復させるだけ。
クラウドは今、一段落ついたからと食料の買い出しに行っていて…オイラは、暗くとも地下は馴れているから平気という彼に強引にくっついて来た。
前足で物を運んだりは出来ないから、どうしても手伝える部分が限られてしまうんだ。
ちょっとでもヴィンセントの役に立ちたくて、コスモキャニオンから飛んで来たのに。
灯りくらいにしかなれないなんて。
「…ナナキは十分に役に立ってくれている。今だって…」
「…うん…」
優しい低音でそう言って、ヴィンセントはオイラの自慢の毛並みを撫でてくれる。
(ああ…気持ちよくて鼻が鳴ってしまいそう)
見上げると、ゆらゆら揺れる炎が映り更に赤くなった彼の瞳が眩しげに細められていた。
(あっ、今…金色に見えた)
「ん?」
「ううん」
オイラは、ヴィンセントの眼が好きだ。クラウドの蒼い眼もキレイだけど、ヴィンセントの赤い瞳はたまに今みたいに金色に見えたりもして…不思議な眼。本当に、ずっと見ていたいくらい。
旅をして色々な人間を見てきたけど、彼みたいな赤い瞳を持つ人間は一人もいなかった。とっても珍しい色。
「…ヴィンセント」
「…何だ」
「オイラ、ヴィンセントの眼が好きなんだ」
「……そうか」
ヴィンセントの声はいつもと変わらなかった。
喜ぶか驚くか、はたまた笑われてしまうかと思ったのに。いや、彼はそう激しくは反応しないだろうけど。
それは解ってるのに…少しだけ悔しいのはなぜだろう。
「ずっと、見ていたいくらい…」
少しだけ、頭を撫でる手が止まった。もしかしたら…困った顔してるかもしれない。
そんなつもりで言ったんじゃないのだけど…
「あ…気にしないで、ごめんね変なこと…」
「…お前は」
「?」
「私の中に、何を見ている…?」
息を飲んだ。
一瞬、オイラを覗いた彼の瞳が、人のものではない何かに見えたから。
今のは…
「……あまり私の近くに居ると、食べてしまうぞ」
からかう様な言い方にハッとし目をぱちぱちと瞬いて見れば、もういつもと変わらない彼だった。いつの間にか灯りも回復してる。
「も、もう…!いつからヴィンセントはそんな意地悪になったのっ」
どこかそれに安心して、ヴィンセントの懐にお返しとばかりに飛び付いてやった。
オイラはまだ子どもだけど体はそれなりに大きいから、細身のヴィンセントはよろけて壁へ寄りかかる。
「フフ…それともお前が私を食べてみるか?」
何を言うんだろうこの人は。
「確かにお腹は空いてるけど…オイラはヒトは食べないよ。それに…もし食べたとしても、ヴィンセントの綺麗な眼が見られなくなるのはイヤだもの」
オイラが好きなのはヴィンセントの眼だけじゃないんだ
いつか、言えるかな…?
「…上に戻ろうか。そろそろクラウドも戻るだろう」
「うん、待って、オイラが前を歩くよ」
それまでにはもっと彼に見合う大人にならなくては。
今は子どもなりの特権として、彼に精一杯甘えてみようと思ったり。
「ヴィンセント、また遊びに来てもいい?」
「…構わないさ…何時でも来ると良い」
その言葉に後ろが明るくなるのを感じて、また恥ずかしくなるオイラでした。
END
FF7ナナヴィン。珍しいCPかもしれないけども、ナナキってなんて動かしやすいんだろうと思いながら書いた記憶があります。
2006/11