好きの理由

好きの理由

最初に好きになったのは

それから
長い髪が揺れる、意外に広い背中と
整った細い指先・・・

最初はただ
賑やかな奴だと思った。
けれど
いつも賑やかな彼が、ときどき黙りがちになる癖がある。
そんな時の彼の真摯な表情に、見惚れると共に思い知る。
彼がどれだけの不安を抱えて旅をしているのかを。
賑やかに、常に話すのは不安を紛らわせる為
それと
自分の不安で周囲を心配させない為
それに気付いてから、彼の話し声に安心している自分にも気が付いた。
彼の声は心地よかった

共に並んで戦っていても、より前に出る彼の背中を見る事が多い。
華奢に見えて、意外に広い背中。
特徴ある緑の髪が揺れて、仲間を庇いながら戦う。
常に周りを気遣う彼の視線が、自分にも注がれているのだとわかった時
とても幸せな気分になっている自分を自覚した。
そして
彼が好きなのだと、自覚した。

拳を武器にしている割に、整った指先に驚く。
器用に得意の料理を作る彼の細い指につい視線を注いでいると
気付いた彼が照れくさそうに笑った。
笑顔に、妙に照れて顔を背けると、彼は不思議そうに俺の顔を覗き込んで、また笑う。

そして、言うのだ。
当たり前の事のように。

俺が好きだと

驚く俺に不意打ちのような軽いキスをして
彼はまた笑う
お前は?
笑顔のまま問われて俺は
呟くようにただ

“好きだ”

と、それだけしか言えなかった。
けれど、その時見せた彼の満面の笑みが今でも忘れられない。
とても、とても幸せな顔。

焦りと、自己嫌悪と、不安とで周りが見えなくて
どこかへ行ってしまいそうな俺の心を、彼の声が繋ぎ止めてくれた。

その声で
名を呼んで
その背で
守ってくれる
その指先で
優しく触れる

そしてそっと笑いあう

貴方が傍にいるから前に進める
貴方が笑ってくれるから微笑む事ができる
誰よりも、何よりも大切な人





好きの理由

最初に好きになったのは

それから
長い髪が揺れる、意外に広い背中と
整った細い指先・・・

実は、最初の印象はあまり良くない
寡黙で
無愛想で
新しく仲間になったというのに
俺の事など興味がないとばかりに通り過ぎる視線

けれど

それは不安故なのだと知った
遠くを見つめる視線には不安が揺らぎ
無愛想な表情には焦りが隠され
寡黙な言葉には自責が含まれていた

痛々しいまでのその思いは
俺にもわかる
彼と俺は似ていないけれど、とても似ているのだと気が付いて
だったら
彼の思いは誰よりも解ってやれると
だから
その思いが少しでも軽くなれば良いと
軽くしてやれれば良いと
そう思った

旅の間、先を進む彼の背中を見る事が多かった
先へ先へと急ぐ彼の背中は
大剣を振るうにしては
あまりに細く、あまりに華奢で
不安と焦燥に押し潰されてしまうのではないかと
まるで壊れやすいガラス細工を見ているような
そんな不安に駆られた
だから
その背中を守ってやりたいと
守れる存在になりたいと
彼が安心して背を預けられる男になりたいと
そう願った

夜眠る前に必ず大剣を手入れする
その彼の指先が
細く、形の良いその指先が
酷く疵ついている事に気が付く
問えば、氷に突き立てた痕だと低い声が呟く
何も出来なかったと、自責する彼の声が
泣いている様に見えて
抱き締めたい衝動に駆られる

思い悩むな
お前のせいじゃない
これから助ければ良いじゃないか
顔を上げろ
前に進もう
それが、辛い道のりでも
俺が
支えてやるから

俺が
守ってやるから

そして
その気持ちが友情ではなく
愛情なのだと
気が付いた時には
もう遅かった

料理を作る俺の手を
食い入るように見ている彼が
子供のようで、微笑ましくて
穏やかな時間が幸せで
思わず

好きだと

余りにあっさりと
普通の事のように告げていた

嫌がられるかと思った
けれど
驚いた顔をしている彼が
ひどく可愛らしく
そして、赤く染まっている頬に気が付いて
なんだ、と

彼も
同じ気持ちだったのだと
そう確信した

自然にこぼれた笑みのまま
軽いキスを贈れば
耳までを赤く染め上げて
お前は? と問えば

ちいさく
“好きだ”と返って来た

やっぱり
彼の気持ちは
俺が一番わかってやれる

俺達は正反対だけれど
とても似ているから
それが嬉しくて嬉しくて
にやける顔をそのままにしていたら
彼が
静かに微笑んだ

その綺麗な微笑を
俺は絶対に忘れない

寡黙で無愛想、俺を通り過ぎる視線
けれど
今は・・・・・・

言葉が無くても、分かり合える
顔に出さなくても、汲み取れる
視線だけは
お互いだけを見詰め合っているから

彼が安心して背を預けられる男になろう
包み込んで
守ってやれるように
何よりも、誰よりも大切な存在だから







いつもお世話になっている、楼原夏夜さんから二万hit記念に頂いたSS二本組みです!
溢れる思いはすでに別途お伝えしたのですが、まだまだお礼を言い足りない…!
見事に二人の思いにやられました。やっぱり夏夜さんの実力って凄い…
もう、何処までも付いて行きますよッ!(迷惑)

夏夜さん、暖かい贈り物有難うございました…!

2005/3/9
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