月影のキミ
「みんなバラバラになる前に、どこかで打ち上げパーティしようヨ♪」
「フム…。暫く会えなくなるんだ、それも良いかもしれん」
「まぁ、楽しそうね!!ここからだとスールズが近いわ、人数的に、集会所を一日借りるのはどうかしら?ねぇヴェイグ」
「あぁ、そうしようか。…ミルハウスト、あんたも来ないか?」
「私もか?そうだな…城の事をワルトゥに一言言付けて、任務を終らせてからお邪魔しよう」
今回の冒険も幕を閉じ、それぞれが各々の目的を持ってくらして行こうという矢先。
マオの発言によって、ミルハウストと一行は、スールズへと集まる事になった。
スールズ集会所。
「ここに来ると、ポプラおばさんのピーチパイパーティを思い出すなぁ。くぅ〜!!」
「ちょっと食事係、サボってないで早く作りなさいよ」
思い出し泣きをしているティトレイを横目に、ヒルダを始め女性陣がテキパキと準備を進める。
「たっだいま〜!!もぅ外暗くなって来ちゃったよ、お腹すいたぁ」
「材料を調達して来た、こんな感じで良いのか?」
「おぅ、上出来上出来♪よっしゃ、今夜は超スペシャルな料理作ってやる!!」
両手一杯に紙袋を抱えて帰宅したマオとユージーンがティトレイと食事の用意を進める。
「ねぇ〜ヴェイグも見てないで手伝ってよう」
「あぁ、すまない」
軽く微笑んでぶーたれるマオの頭を撫でてやる。
「…ぁ、うん//…何かドキドキしちゃぅなぁ…」
「どうした?」
「ん〜ん!!…ヴェイグはやっぱり、笑ってた方が更に綺麗!」
親指をグッと出してウインクし、パタパタと戻ってしまった。
「マオ!!てめぇヴェイグにちょっかい出してんじゃねぇ!!」
「綺麗な人をキレイって誉めてなにが悪いのさ〜!!」
「お前達、喋っている暇があったら寝具を借りてこい」
…残されたヴェイグは彼の発言の意味を図りかねていた。
「綺麗……?」
「ヴェイグさん」
控え目な声に振り返ると、アニーが頬を染めて見上げていた。
「あの…そろそろ、ミルハウストさんがいらっしゃるんじゃないでしょうか」
時計を見ると、21時を回ったところであった。確かにそろそろ着いてもおかしくない。
「…オレが迎えに行こう。アニー、皆に先に始めていてくれと伝えてくれ」
「はい!!」
──その頃村の入り口。
「思ったよりも遅くなってしまったな…早く集会所に行かねば…、?」
近くの宿屋前に人が集まり、心配そうに何かを話している。こういった事が見過ごせない性分のミルハウストは、事を尋いてみた。
「ん?あんた…見掛けない人だが旅人さんかい?」
「…そんな所だ。それより何にか?」
顔を見合わせる村人達。
「実は…宿屋の息子さんが裏手の森に薪を取りに行ったきり、まだ戻って来ていないそうなんです」
「今からわしらで、捜索に行こうと思うんじゃが」
「そうか…それは心配だ。…ここに居合わせたのも縁、私も行こう」
早くヴェイグ達と合流したかったが、捜索に行くというのが年寄りと女、子どもなので頼りない。まだカレギアからバイラスが消えた訳ではないのだから。
「あぁそれは有り難い。お前さんみたいな人なら安心してお願い出来る」
「何にか有ったのか?」
聞き覚えのある低音に目を向けると、銀色が目に入る。何時の間にかヴェイグが輪の中に入って来たようだ。村人の話を聞いたヴェイグは、ミルハウストと同じ答えを出した。
「ならオレも行く。ミルハウストとおじさん以外は待っていてくれ、擦れ違うと良くないから…すぐに見付けてくる」
「ヴェイグ…行こう」
「ああ」
──裏手の森。
昼は明るいが、夕方には直ぐに薄暗くなってしまう森である。月明かりがヴェイグ達の視界をなんとか補っていた。
「足跡が…!!、居たぞ!!」
「ふぇぇ、ヴェイグ〜おとうちゃ〜ん!!」
探していた子は、どうやら足を捻って動けなくなっていたらしい。宿屋まで子どもと父親を送り、ヴェイグ達はようやく集会所へと向かう道に着く。
「あの子…無事で良かった…」
「あぁ…。…、かなり遅くなってしまったが、他の皆は平気か?」
「平気だろう…皆あんたが来るのを楽しみにしていた、早く行こう。…こっちだ」
言われるまま、彼の後ろに着いて歩き出す。思えば彼の後姿を見るのはこれが初めてだ。
淡い月明かりが彼と銀の髪を包み、キラキラと輝いて見える。思えば初めて剣を交えた時の一直線で荒々しい感じはなくなり、彼は穏やかな優しい雰囲気へと随分な変化を遂げた。
…そこまで考えると、自分と似ている彼の成長を見守っているようで何だか嬉しい様な複雑な気分になる。
「…ミ…ト…ミルハウスト?」
「…!!すまん、考え事をしていた」
呆けるなんて珍しいな、と緩く微笑む彼を見て、トクンと胸が鳴るのを覚える。この感じは…
「着いた…ここ…なんだが…やけに静かだな」
ドアを開け中の様子を見て…彼は直ぐにドアを閉め、戻って来てしまった。
「酒臭い…皆、酔い潰れて眠ってしまったようだ」
私が来るのを楽しみにしていたのではないのか…と内心で突っ込むが、申し訳なさそうなヴェイグに免じてさらりと流す事にした。
話を聞いているうちに、彼と幼馴染みしか知らない、月の良く見える場所へ案内してくれる事になった。
──秘密の場所。
「…寒くないか?」
オレは寒いのは平気だが…と問われる。正直、寒いのは苦手であるがそれを言っては彼に気を遣わせてしまうだろうと嘘を吐いた。
…が、くすりと笑って冷えた指先を取られる。彼の体温が暖かい。
「毛布でも持ってくれば良かった。…流石のあんたも寒さには弱いか…」
こんなに冷えて…と、彼は私の手を自分の首筋に押し付けた。
冷たさに一瞬睫毛を震わせる彼を見た時、自分の彼に対する気持がどういうものか、唐突に感じ、突き動かされた。
…私はヴェイグを…
「…愛してる…」
「……!!」
少し遅れて顔を上げたヴェイグの唇に、強引に口付けた。
「ン…ぅ…!」
肩を押し返そうとする手を掴み、ヴェイグを背後の木へと縫いつける。
「…ル…ハウスト…?」
「……満月には、ヒトを狂わせる不思議な力があると云う…」
本当に月の所為…?
いや、月の所為にして
このまま彼を──
「…ヴェイグ…!」
手首を掴む手に力が入る。その痛みに微かに瞳を揺らし、ヴェイグが口を開く。
「…なら…オレも、狂ってしまったのかもな…」
全く予期せぬ答えに身をかため、彼を見つめてしまう。その視線が、話の先を促していると彼は感じた様だった。
慣れない至近距離に居心地悪そうに視線を迷わせ
「…普通は、同性にこんなことされるなんて嫌だと思う。でも、あんたの場合は違うんだ…よくわからないが、おかしい…よな…」
思わず頬が緩む。
全くこの青年は…
自分が何を言っているのか理解しているのだろうか。
彼が抵抗し、拒んでくれたなら…まだ自分の欲望を抑える事が出来たのに。
全てを月と彼の所為にして、私はそのしなやかな肌に手を滑らせた──
***
「ん、ふッ…ぅっ!」
木の幹に手をつかせ、バックからヴェイグを何度も突き上げる。私を締め付ける彼の体内はとろける様に熱く、そして狭い。
「あ…ミル…っもッ、…んっんぁっ」
「っどうした、イッたばかりだろう…?」
何度目か分からない絶頂を迎えヴェイグの先端からはもう薄い液体しか出ていない。
「はぁ、はっ…ぁ」
ずるずると姿勢を崩し、尻を高くつきだす形になった彼内部を押し上げ更に追い詰める。
「ひッ、いぁ…あぁあっ」
「く…私もそろそろ…」
「んふ…ぅ、ミル…?んぁあん!!」
貫かれたまま突然体をぐるりと反転させられたまったものではない。ヴェイグはその突き抜ける衝撃に精を放ち、ミルハウスト自身を絞る様に締め付けた。
「っ」
びゅく、びゅくとヴェイグの体内に放出した自身を数回出し挿れし引き抜く。
体内から出ていく感覚にふるりと体を震わせ、ヴェイグは意識を手放した──
「無理をさせてすまない…ヴェイグ…お前があまりにも…」
汗ばんでぐったりとした体を抱き寄せ、背中から上着を掛け肩口に顔を埋める。
明日になって、もし彼が自分を冷たくあしらっても…それは仕方のないこと。
ほぼ強引に抱いてしまった…我ながら感情に流されるなど、と情けなくなる。
手早く後処理をし服を直して、彼の体を冷やさない様に火を起こす。
情事のあとの気だるさに息を吐きながら夜空を見上げると、満月が綺麗なことに気付く。先まではヴェイグばかりに注意が行っていたので気が付かなかったのだ。
「…ヴェイグ…」
月影の下の貴方は、あまりにも儚げに見えて
貴方の為ならば私は…彼女のことも…
自分らしからぬ思考に、思わず苦笑がもれた。
今度はちゃんとした場所で、彼に再度返事を請おう。
静かに寝息をたてるヴェイグを抱き、ミルハウストは集会所へと歩き始めた。
2005/1/16