大切な君のために
「…以上です、プロネーマ様」
『御苦労じゃった。引き続き監視を続けよ』
ヴン、と耳障りな音と共に映像が消える。
ほ、と息をついたら
「っ、いた…ゼロスー!飯が冷めるぞ!」
あーあ、こんなとこまで来ちゃって。
つか、飯でわざわざ来てくれたの?
「はぁ…、そろそろ…暗くなるんだし。一人で離れたら危ないだろ」
息、切らしてる。
此処までは大した距離じゃないけど、分かりにくい場所だからなぁ。
「ロイドくん…」
見られたかな、という心配の裏で、こんなとこまで呼びに来てくれてほっとしてる自分がいる。
「ったく…で、何にしてたんだよ。こんなとこで」
余り深く追求される前に気を逸らさないと…こいつ変な所で鋭いから。
「…なぁ〜に、メルトキオに残して来た、ハニー達の事が気になっちゃって。ちょ〜っとセンチメンタルになってたわけ」
ロイドくんにはわっかんねぇよなぁ、とからかえば直ぐにムキになって反論してきやがる…ほんと、アツくてめんどくせーヤツ。
…でもその熱さがいつの間にかイヤじゃなくなってたんだけど。
「……」
あらら…急に黙っちゃって。
ジト、と少し下から見詰められる。
…イヤだ、この雰囲気。
ロイドくんには嫌われたくないのに
嫌われたく、ない…?
やっぱり俺さまは、ロイドくん無しじゃいられないのかも
…なんて。
往生際わりぃな、俺さまも。
「…おや?ロイドくん妬き餅焼いてくれてんの?でひゃひゃ!隠さなくても良いんだぜぇいやぁ〜俺さま愛されて、…っ」
まくしたてて誤魔化そうとしたら、それを見抜くかの様に強い瞳が、真っ直ぐに俺を射抜いた。
跳ね上がる、鼓動。
「…ちょうどいいや。ちょっと話しようぜ」
「…えっ?!ちょ、ロイドっあ」
ずかずかと近付いてきたロイドくんに手首を掴まれて、ぐいぐいと森の中に引っ張られて行く。
バカバカ。二人きりになんかなったら、隠せない。
お前の前だと、ぎこちなくなっていつボロが出るか。
「な、…飯、行かないとだろ??早く行かないとリフィル様に怒られちゃうぜ〜?」
「いいから。黙ってついてこい」
「…へいへい…」
力が弱まるどころか強くなる。駄目だこりゃ。離してくれそうにない。
こうと決めたら諦めないからな、コイツ。
さくさくと草を踏みながらぐんぐん進む。ぼんやりと言い訳を考えながら、
ロイドくんの後ろ姿を見ていたら…どのくらい歩いたんだろうか、急に視界が開けた。
湖。
夕日が映えて、燃える様に水面が煌く。
掴まれた腕が離されて、ロイドくんが向き直る。
逆光で、顔が良く見えない。無意識に目を細める。
キラキラしてる彼が眩しかったのか日が眩しかったのか、恐らく両方。
「…ゼロス。お前最近、俺にだけよそよそしくねぇか?」
てっきり何をしてたのかを本格的に突っ込まれるのかと思っていたから、言葉が出てこない。
ほんと鋭いねぇ…
「……んなことないっしょ、俺さまはいつもど〜りに」
「それ、やめろよ」
「へ?」
分かってる。
だって、
お前に上っ面の仮面を、剥がされて、剥がされて
もう残っているのは
「だから…!!そんな顔までして無理して笑うなって言ってんだよ…!」
「ロイドく…」
「一人で、抱え込むなよ…」
よそよそしいのは、お前に対する俺さまの気持ちに気付いてしまったから。
いつも気に掛けてくれるお前の優しさに、期待してしまうから。
そして
そんなお前に、これから剣先を向けなければならないから。
距離を、少しでも、自分を誤魔化す為に。
「…わりぃ…」
マジで、ごめん。
「…そんなに、信用ねぇかな」
違う、…本当は全部ロイドくんにぶちまけちゃいたいんだ。
俺さまなんかを本当に信じてくれてるお前に甘えたい。
ホント、どうかしちまってるんだよ俺さま。
好きで好きでたまらないんだよ。
でも、今は謝る事しかできない。
…ああ、なんか苦しい、目の奥が痛い。
唇をかみ締めたその時、ロイドくんの手が伸びてきて、触れられて
びく、と体が震えてしまった
「…ごめん、ホント俺って馬鹿だ」
ぎゅ、と抱き締められて
「俺、お前が俺のこと信用してくれるまで、待ってるから」
でも、今だけでもいい、我慢するなよ、と。
ほろり
不安でいっぱいだったんだ
居場所が欲しかった
俺さま自身へ向けられる
真っ直ぐな優しさが、欲しかった
ありがとう ロイド
涙を隠してくれる様に、そっと彼の肩口へ頭を抱き寄せてくれた
俺さま何時からこんな乙女になったんだろう、なんて思いながら
そのまま顔を埋めて、声を殺して泣いた
最後の最後で、絶望へと傾いていた天秤が大きく揺らぐ。
…決めたぜ
ハニーの為に、俺さま、ちょっくら体張ってくるから
ホント、その時はゴメンじゃすまないと思うけど
戻ってきたら、この気持ち、お前にぶつけてみようか
どんな返事が返ってくるかは、別にして。
―――
ぐぅ。
あれ?
「ロイドくん…もしかしてまだ食べてないの?」
少し落ち着いてきた頃、ロイドくんのお腹が。
雰囲気ぶち壊しじゃないの、思わず、ぷ、と吹き出す。
「ああ、…って笑うな!」
「はは、わりわり…てっきり先に食っちまったのかと」
へら、と気の抜けた笑いで答える。
「一緒に食べようと思ったんだよ。一人で食うの、お前寂しいだろうと思って」
「…!」
そう、一人で食べる、冷めた食事なんてまっぴらだ
もう、ほんと、お前って俺さまのことどこまで…
今、凄く幸せかも
「ゼロス」
「ん、な〜に?」
「笑えるじゃん」
「あ…」
はぁ、俺さま完敗。
ベタ惚れだわ。
2005/5/17