夢見際ボーイ




『ふぅ…ぁッ…!!』



熱い体に抱き締められ

耳を食まれながら囁かれた言葉は




『ゼロス…愛してる』








 □夢見際ボーイ□








「!!!!」

バサッ!!

と、勢いよく布団を蹴りあげて飛び起きた

…、……夢?
心臓バクバク、荒い息を努めて抑えながら、隣の寝具の様子を恐る恐る、見てみる。

…まさか、声とかもらしてねぇだろうな俺さま…?!
よりによってこいつと同室の時に、なんつう夢みてんのよ〜…!!



もう一度、そっと気配を窺う。
…、…寝息は聞こえないけど。寝てる…多分、寝てるはずだ。
というか寝てなくちゃ困るぞ流石に。



『ゼロス…』

「っ…」


薄暗いなかで眠るロイドの背中を見た途端、熱く囁かれた言葉がリアルに蘇ってきて。
そのまま夢の中で酷く感じ入っていた自分を思い出し、疼く体を誤魔化そうと乱れた髪を乱暴にかき上げた。


こんな夢を見るなんて、俺さまそ〜と〜溜ってるのか…
欲求不満なのかねぇ…

何に対して欲求不満なんか、と自分に苦笑する。

夢の中での行為は、願望も合間って倍気持ちがイイとか…誰かが言っていたっけか。
それよりも…まさか、ロイドくんに"抱かれる側"の夢を見るなんて。
抱きたい、というか…まぁキスしたいと思ったことはあるけど…迫って拒絶なんかされたら…って思うとな…。



…ロイドくんの…声、肌、それから…




「…、…」


…な…!
何考えてるんだ俺さま!
おさまる所か余計…

ここで処理する訳にはいかねぇ、よな…でも下手に動いて起こしちまったら、こいつのことだからしつこいぞー…。


声を、出さない様にすればいけるか…



早く熱を出してしまいたくて、絹ずれの音さえ出さない様に注意しながら最低限汚さない範囲で服ををずらし、
紅くなりかけた自身へと指を絡める


くに…

くしゅ、くしゅくしゅ


あ…ロイド…


くちっ

くちゅ…クチュッ


「っふ…」

あぁ、もう少しで…っ

普段なら他人がいる部屋でこんなことはしない。
なのにどうしてこの時はしてしまったのか。
夢の中での、彼の指の動きを真似ることに夢中になっていた俺さまは自分の出す水音に気付くことなんて出来なくて…。


「ゼロス?」


「んっ…ロイド…、っ?!!」


い、何時から目の前に。


「なんか…うなされてたから…」

「あ…」


お…俺さまピーンチ…!!


「…どうしたんだ?汗かいて…熱でもあるのか…?」

ひた、と額に手を触れられた瞬間ビクリと体を震わせてしまった。
シーツ一枚を隔てて息づく自身からは、誤魔化しきれない程滴る蜜。

反応に驚いたのか手を引いたロイドは、怖い夢でもみたのか?と更に覗込んでくる。

ち、近いよロイドくん…!

「ロ…ロイド!その…起こしちまってごめんな?もう大丈夫だから!!」

ロイドくんを直視出来なくて、へらりと笑いながらせめて起立した自身を何とか隠そうと体を丸めるが

「…嘘。お前目そらすからすぐに分かるんだぜ」

「…、…ぅ」

何も言い返せない俺さまの様子を見兼ねたのか、はぁ…と溜め息をついたロイドくんは、シーツに手を掛けて

「ちょっ…」

「一緒に寝てやるから」

「ぁ…ほ、ほんと平気だって…っ」

「手をつないで眠ると、怖い夢見ないんだってさ。遠慮すんなよゼロス!」

にか、と笑って譲らないロイド。
あぁ笑顔が眩しい…


じゃなくて!!


…、…なんかもう泣きたくなってきた…


俺さまがセンチメンタルになってるのに大して気にもとめず、なけなしの薄いシーツがばさりっ、と捲られる。

「あっ…!!」

「っ…」

動きを止めるロイド。
そりゃ〜そうだわな、同室の男が自分のを握って息荒くしてんだから。

「……」

「……」

あぁ…気まずい。


いっそ殺して欲しいくらい恥ずかしかったんだけど、それは見てしまった張本人も同じだったようで。


「ご…ごめん!!俺…」

「…は、まぁ…別にいいけど」

うー、と小さくなって仔犬のようにわたわたと謝るロイドを見ていたら、
さっきまでの恥ずかしさなんて、もう何処吹く風。

ハニーったら…そこまで…ふふ、ちょっとからかってやってもいいよな?


「…な、ロイド」

「…ん、何だ?」

まだ申し訳なさそうな顔してる彼の手を掴んで、少し萎えてしまった自身へと導く。

「…!!」

「それはいいから。代わりに…手伝ってくれよ」

「えっ…」

はは、案の定固まっちゃって。
ロイドはこういう事に免疫なさそうだから、そこら辺つっこまれるとどうすんのか。
見てみたい…なんて

ほんとちょっとした、冗談。のはずだったんだけど



「んっ…?」


「俺…こういうことよくわかんねぇから…痛くしたらごめん」

まさか、本当に触れてくるなんて。
ソフトに握りこまれ、人指し指と親指の輪で優しくしごかれ…ってちょッ、ちょっと…!!

「ろ、ロイドくんッ?」

「痛いか?」

微妙に強張った表情で心配そうに尋ねてくる彼に、そしてこの状況に今夜の夢が重なって。

ほんともう、まずいんですけどっ…

「も、いいから…冗談だって…ッ」

「……」

既に力の入らなくなっている手で抵抗を試みるが、お構いなしにロイドは蜜をもらす茎を扱き続ける。

自分から見れば、それはとても拙い動きなのに。

ロイドがやっていると認識するだけで、ゾクゾクと追い上げられて

「く、…んッ」

だめ、イッちまう…!!
このままじゃ…!

「ッロイド!!」

流されまいと荒げた声にぴくりと肩を震わせ、はっと彼は顔を上げた。

「お前ッ…」

「…きもち悪い、よな」

へ…?

「ゴメン、おかしいんだ、俺…ゼロスの声とか聞いてたら…その…」

抑えられなくなっちまって…

そう言って、恥ずかしそうにもごもごと口を動かして。

「…触りたかった?」

「…」

こくりと彼は頷く。
おいおい、それって…

「…ロイド」

ちょいちょいと指先で呼び寄せて、近寄った彼の唇をそっと食んでみる。

「っ…」

「…嫌だった?」

「…ううん。ゼロスは?」

「…嫌だったら、この俺さまが、男相手にこんな事すると思う?」



それきり、二人して黙りこむ。



部屋が薄暗いからよくはわからないけども
…俺さま達、多分顔真っ赤だ…


お互い思っていることは一緒…
まさかこんな形でロイドくんからの気持が判明するなんて…いや、めちゃめちゃ嬉しいんだけど。

「…、…」

ロイドがどう出るか、目だけでそっと様子を窺うと、彼も同じ様に思ったのかぱちり、と瞳がかちあってしまった。


「「あ…」」


も…もー!!ロイド、男だろ?!
こーいう時はビシッと決めないと女の子にモテないぜ?!

俺さまがリードしてやんなきゃやっぱりだめ


がちんっ


「!!…ッう、んぅ…」
「んっ…、…」


いっつ…ロイドくん、キス下手すぎ…

急に猪みたいに突進してくるもんだから。そう言えばこいつ猪突猛進って称号もってたっけ…

どこかでそんな事を考えながら、じんと痺れる前歯に顔を微かにしかめた。


つーか、キスくらい、出来た方がいいよな…?


恐る恐る体を離そうとする彼の腰に手を回してそれを阻み、互いの唇がふれそうでふれない距離をとる。


「…ロイドくん…真似、してみ?」


目を丸くするロイドの薄く開いた唇に舌を這わせ、角度を変えながら内へと潜り込ませた。

腕の中の体が強張るのがわかったけど、もう止められない。
突進してきたのは、ロイドなんだから。

くぐもった声をもらす彼の口内を暫く楽しんで、そっと解放してやると、苦しそうに息を吸って…そして彼はなにやら思案顔になった。

フフ、俺さまのテクそうは真似できねーぜ…?


「…うん、わかった。…やってみる」


そっと頬を撫でた手が、そのまま耳をかすめて後頭部に添えられる。
そんな壊れ物扱うみたいに触れなくたっていいのに…でも、これがこいつの優しさなんだよなぁ。
今までそんな風に触られたことなんてなかったから。

少し荒れていてがさつくけれど、彼の手はとても心地良かった。


至近距離で絡み合う、視線。


「…眼、閉じろよ…」


照れ臭そうに言うロイドに、自然と笑みが溢れる。


あ…今なら、言えそう


「ロイド…」

俺の声に何か感じとったのか、彼も真面目な顔になって。

「…ゼロス?」



「「俺…」」



声が重なる。苦笑。



「待った。…いち、にの、さん、で一緒に言おうぜ?」

「んー…わかった。抜け駆けはなしだからな!!…いち」

「へいへい…にの」

「…さん!!」






「「    」」





ぷっ






二人して同時に吹き出し、げらげらと笑い出す。


「おいおい、それロイドくんいつからよ!!」

「お前こそ、男には興味ないとか言ってたくせに!!」

雰囲気もへったくれもないけど。
ばかみたいに笑って、どちらからともなく抱き締め合う。

ほらな。
やっぱり、お互い言いたいことは同じだったんだ。









暫くして、ロイドが嬉しそうに口を開く。


「そだ、まだ実践してなかったな」

「んー?なんだっけー…?」


ふわふわと。
ロイドと両思いだったことに幸せな気分に浸っていた俺さまの腰を抱き寄せて

髪を撫でた手が、後頭部で止まる。


ああ、そうか。
真似してみろ、ってやつね。

さて、どこまで出来てるか。


俺さまは悪戯っぽく微笑んで、そっと瞳を閉じた。



















「ま、まだまだだなー…練習あるのみ、だぜ。ハニーvV」

「んー、難しいな…。俺、ゼロスの為に頑張るから!」




ロイドくんのリベンジキスは
実は腰がくだける程のものだった、なんて


恥ずかしくて、誰にも言えない。


これ以上上手くなっちゃったら、俺さまどうなっちゃうのよ…
そんなことを思いながらも、やっぱり顔がほころんでしまうのだった。




2005/7/11
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