トマトとロイドと俺さまと



窓からの爽やかな風が頬を撫でる、穏やかな午後。

ロイドと休日を満喫中の俺さまは、やわらかいソファにのんびりと身を沈め、なんとなく手にとった料理雑誌を捲っていた。

「…ん」

ふと、トマトの特集記事が目に留まる。

「…美白に抗酸化作用…なになに…、ほぉー…」

最近のトマトは、品種改良が進んでとても食べやすいものになっているらしい。
他にも色々良いことがあるらしいが、これこれ。
これって、ロイドくんに朗報なんじゃないの?





ロイドがトマトを克服しようと、こっそり挑戦していることは知ってる。
本人は隠してるつもりだろうけど…ちょっとかじっただけのトマトを、彼がすぐノイシュにやっているのを何回か見かけてしまったから。

好きな相手の力になりたいと思うのは当然の事。
それに、俺さまがトマトを頬張るのを見て、俺もゼロスみたいに美味しそうに食ってみたい…なんて寂しそうに呟かれちゃあな。

この記事を参考にさせてもらって、ロイドが克服できる様に一肌脱いでやろうじゃないの。
それじゃ、トマト作戦開始。








「なぁ、ロイドくーん?」

隣でブローチをいじっているロイドの肩に凭れ掛かる。
先日から滞在している、この村の人から修理を頼まれたものらしい。
最初見た時は自分への贈り物かと思って、ちょっと期待したりしなかったり。
まぁ、そのブローチは俺さまの趣味じゃないからいーんだけど。

「…んー、もうちょっとで終わるから」

ちょっと待ってくれ、と表情を変えずに作業を続けるロイドであったが、トマトという単語に一瞬手が止まったのを俺さまは見逃さなかった。
手元が狂わないようにそっと体を離して立ち上がり、暫くして台所から真っ赤に熟したトマトを小さめに切り分けたものと、砂糖の入った瓶を手に戻る。

「よし…で。なんだよ、急にトマトの話なんか…」

ブローチをしまうと、机の上の赤い物体をちらりと一瞥してロイドがこちらへ向き直った。不安が思いっきり顔に出てるぞロイドくん…

「食べられるようになりたいんしょ?」
「なんで知っ」

そこまで言って慌てて口を紡ぐロイドにニヤリと笑みを返すと、彼は諦めたように頷いた。

「こいつの何が苦手なのよ?」
「…青臭いとこ。食感も」
「味は?」
「味もいまいち、はっきりしないし美味くない、です…」

別に恥ずかしいことじゃないのに、頬染めちゃって。可愛いんだから。
ぷにぷにと頬をいじりたい気持ちに駆られるが、話がずれそうだから我慢。

「そか。…んじゃあ食べる前にまず、敵を知るんだな。トマトくんについてイイ事を教えてやるぜ」

子供に言い聞かせるように、さっきの雑誌記事を思い出しながら、トマトを主人公にした物語を聞かせてやった。


トマトの赤を構成するリコピンという成分が、体が錆びるのを防いでくれること

ガン予防や、血液サラサラ効果、下腹が気になるあなたにダイエット効果があること

最近のトマトは果物のように美味しく、味の濃いものもあるということ

そして…

「学習能力の向上効果」

があるということ。それらを織り交ぜて。


「……そうして、王国の危機をトマトが救いましたとさ。めでたしめでたし、っと」

とまぁ。
勿論、即席だからあまり上手い内容じゃないが、それでもロイドの目は学習能力の話に差し掛かった所から明らかに輝いていた。

「すっげーな、トマトってそんなに凄いやつだったのか!」

児童書並みの展開だったからてっきり子供扱いするな、と怒られるかと思っていた。
可哀想なくらい単純なロイドくんを、愛しさたっぷりに見詰めてしまう。
おバカな子ほど可愛いって言うリフィル様の言い分にも納得ってもんだ。

今なら食べられそうな気がする、と皿の上のトマトを一切れ手に取ったのを見て、俺さまは瓶を差し出しながら言った。

「これつけて食べてみ、甘くて美味しくなるぜ?」
「ああ、…これって」

指に取りぺろり、と瓶の中のものを舐めて

「…砂糖?」
「そ。本当はこういう風に切り分けないで、砂糖をちょぴりつけてまるごとガブリ、といくワイルドなおやつなのさ、トマトってのは」
「へー…!!そう聞くとうまそう!!」

ワイルドという言葉に更に突き動かされたのか、砂糖をぱっぱとかけて、そのままぽいっと。
驚いた、本当に口の中に放り込んでしまった。

もぎゅもぎゅと何時になく真剣な顔つきで食べるロイドの横顔と潔さに軽く惚れ直しながら、身を乗り出して感想を訊いてみる。

「どうだ?美味いだろ?」


…あれ、いまいち美味しそうな顔してない。

「んー、でもさ、今ロイドくん普通に食べられたじゃない」
「…うーん、前よりは不味くない気がするんだけど…」

もごもごと舌を口の中で動かしてる。
ああ、駄目駄目。嫌いなものって、口の中で嫌な味をわざわざ探しちまうから、余計嫌いになるんだよな。
もう少しで克服出来そうなんだから…

「やっぱり俺…、っ…!」

味から気を逸らせる為に
ロイドの顎を指先で引き寄せ、驚いて軽く開いた唇をそっと舐めた。
急なことに少し赤くなった顔でぱちくりと目を瞬いてから、ロイドはすぐにキスを返してくれる。

「どうしたんだよ…」

もう一息。そう、これを言えばきっと食べるようになってくれる。
ロイドくんと同じ様に、俺さまは少し困ったように微笑んだ。

「な、ロイド…もう一つ、トマトの素敵な効果知りたくないか…?」
「え、まだある、の…っておい!ゼロ…」

俺さまがロイドの股間を緩く揉んだものだから、慌ててその手が抑えられ。
何か言おうとする彼の唇を空いているほうの人差し指で制し更に刺激すると、まもなくそこは形を変え始める。
上から抑えられただけでは、何の障害にもならない。寧ろ、自身へ俺さまの手を押し付ける形になっているのだから、ロイドは余計感じるだろうに。

「ぁ…ん、だよ…」

彼の吐息が唇へ当てられた指を撫でていき、次には指先ごと口の中に含まれて嬲られて。
ゾクリと粟立つ様な感覚に此方も知らずに息が上がる。


舐められた指を己の口へと運び、ロイドに見せ付ける様に舌を絡めながら彼自身への刺激を更に強くした。

ひくりと腰を痙攣させ、ロイドが熱を逃がす様に息を吐く。

「ここの…な?」

簡単な格好をしていた為容易に取り出された彼自身をくしゅくしゅと扱き上げながら、膝を跨ぐ様にして彼の肩をソファに押し付ける。
下からの刺激に目を潤ませて必死に耐えるロイドは、酷く此方の熱を煽る。

もう…俺さままで、その気になって来ちゃったじゃないのよ…

「!っぐ」
 
すっかり立ち上がった先端をぐりっと親指で擦ると面白いように腰が跳ねて

「ここの病気、防いでくれるんだってー…」

根元を握っていた手を離し、ホッと力を抜いたロイドの額に、口付ける

「俺さまやーよ?ロイドくんが体の中で感じられなく、なっちまうなんて…だから」
「…ゼロスは俺のここだけあれば良いとか、思ってたり?」
「へっ?」

服越しに尻を両手で割り開かれ、すぼまった部分目がけてぐっ、と硬いものが押し付けられた。

「あ、ッ…!」

ちくしょー、ロイドくんの触ってたら俺まで…
たったこれだけのことでそこがひくついちまう。
俺さまがこれに弱いのを知っていて、反撃とばかりにグイグイねじりこんで来やがって。布越しなのに、今にも貫かれそう。先の快感を想像してしまう。

「っ、んっ…バカ、ちが…、そのくらいにしかお前のこと考えてなかったら、俺さまと〜っくにぅッ?!」

にぅってなんだ、猫か俺さまは!
不意に口の中に指が侵入してきたため不明瞭になった発音。恥ずかしくて苦しくて反射的に軽く睨み返すと、今度は荒々しく口内を攻められる

「―ンン、っむ……う、…!!」

引こうとするが後頭部を押さえ付けられていて動けない。砂糖が少しついて甘い二本の指が口内を余す所無く這い回り、奥へと逃げた舌をも器用に絡め取られ、引き抜かれた指から唾液の糸が伸びる。


「っ…はぁ…」
「…それ以上、言うな」
「…じ、」
「冗談でも!!」
「!…ご、めん…」

素直に謝る。
…そうだよな。
お前は、俺が「いなくなる」とか「人生どうでもいいや」みたいなこと、冗談でも言うのを許してくれない。でもそれは決して窮屈じゃないんだ。
俺さまの事を、お前は誰よりも考えてくれてるだろうから。

「ん…俺、お前のためにも食べるよ。ゼロスも料理、頑張れよな」
「ふふーん、もっちろんそのつも、り…?!」

こ、こいつ…俺さまこっそり勉強してたのになんで…!
いつから気が付いてたんだろうか。
つくづく隠し事が出来ないんだからもー…てかそれはお互い様か。

「じゃあ、お互いの為に頑張るってことか」
「だな」

頑張るなんてあんま使った事ねぇ言葉だけど。
二人で頑張れば、一人で頑張るよりもきっとうまく行く。
…俺さまったら前向き〜、影響受けてんな〜…。

「…よーし!絶対食えよロイド!」

ぐりぐりとロイドのつんつん頭を撫で潰すと、抗議の声が下から聞こえたけど気にしない。
トマト作戦が決まって何だかいい気分になった俺さまは、ぼふっとロイドの首に抱き付いて彼の後ろ髪をいじりながら話を続けた。

「頭も良くなるといいなー、ハニーはそこが弱点だからな〜」
「…犯すぞ」
「きゃー俺さまロイドに犯されちゃう〜」

腕の中で、おどけてへらへら笑ってたら。
ぎゅう、と強い力で抱き締め返された。

「…ハニー?」
「ごめん、限界」
「へ?!」
「続き、しよう」
「!」




*****




「どうして、料理の勉強始めたんだ?」

寄り添う体温の心地よさにまどろんでいたら、ふと問い掛けられた。

「ん…それは…」

それは、地の神殿でカレー作りに指名された時から。
料理なんてほとんどやった事ないものだから、その時は心底面倒に感じたけど。
気が付けば、汗だくになりながら、必死こいて鍋かき回してた。
リーガルのおっさんから助けを借りて、なんとか、なんとか出来上がったそれを食べて、お前は「美味しい、また食いたい」って、本当に美味そうな顔して言ってくれた。

また、ロイドからその言葉を聞きたくて。
それが理由だ、なんて。
俺さま、ストレートにものを言うのは得意じゃねーんだ。
そのくせ、ロイドにはストレートに言わないと通じないんだけどな。

ったくもー、あの時すげー嬉しくて抱き付きまくったから、ちょっとくらい覚えててくれたっていいのに…困ったハニー…


「トマト…食べられるようになったら、教えてやる…よ…」


落ちる寸前に、くすりと笑う声が聞こえた気がした。






「…お前のカレー、また食いたいな…」


ゼロスが聞いていたら飛び起きたであろう言葉をさらりと残して、ロイドも瞼を閉じた。





2005/10/01

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